wattsのノート−いろいろな本のノート

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2010/6/11 感想を書きました。


「検診で寿命は延びない」岡田正彦 PHP研究所 PHP新書 669 2010年 5月 28日発行

新潟大学の予防医学の先生が書いた本で、現在日本で広く行われている医学検診の在り方に異義を唱える内容である。まず検診で行われる各検査の意味を簡単に説明した上で、がん検診、人間ドック、メタボ検診、脳ドックという各検診の有効性を検討して行く。おおまかに行って、検診で行われている検査には、そんなに意味のないものがある、検診で早期発見、早期治療をしても死亡率は下がっていない、検査がかえって体に有害な場合もあるということが主張されている。ではなぜ、そういう検査がずっと行われてきたり、わざわざメタボ検診などと新しく作られているのかというと、行政と医療産業の思惑がある。彼らが儲かるように誘導されているようなのだ。そのために、いろいろなデータが都合良く使われたりすることもあるようだ。

以前に読んだ「「まじめ」をやめれば病気にならない 簡単!免疫生活術」とはまた少し違った立場から、現代日本の医学の状況を批判する内容になっている。しかし、「「まじめ」をやめれば病気にならない 簡単!免疫生活術」を読んだときも思ったのだが、どちらも非常に参考になる本、それらの本の言う通りだと思うのだが、少数の先生が主張するには問題が大きすぎると思うのだ。健康なときはいいけど、具合が悪くなると、医者にかかるかどうか、どういう治療を受けるかどうかは大問題になる。そういうとき、この本に書いてありますから、その通りにしますと主張出来るだろうか。まえがきで、この本は一般論を書いているので、読者は自己責任でお願いしますと言っているのだが、そのとき周囲に的確なアドバイスをしてくれる医療関係者がはたしているだろうか。この本の問題は各々の検査の有効性の批判から始まって、医療産業批判、行政批判、社会批判、一人一人のどういう生き方がいいのかという問題にまで広がって行くだろう。著者はもちろん、医学、自然科学の立場からアプローチしているのだけど、それだけでなく、社会科学、人文科学的な側面からの検討も必要とされる問題になって行くと思うのだ。まずは、もっとマスコミが、または個々人がインターネットなどで、こういう問題を取り上げて取沙汰されるようになって欲しい。

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