2010/1/16 感想を書きました。
この本は、JIA環境行動委員会の開催した 6つのセミナーの記録を編集したもので、環境と建築という側面から 2050年という未来を見通した 6つのテーマの講義とパネル・ディスカッションが収録されている。その内容は「1 都市へ介入してつくりかえる」「2 水から都市を組み立て直す」「3 農から環境を創造する」「4 緑で風景文化をつくる」「5 脱ヒートアイランド都市を作る」「6 住から環境をつくる」と題して、各回二、三人の講師がふだん取り組んでいる研究、実践活動について解説をするというものだ。
私がこの本を読んでみたくなったのは、環境や資源の問題で、この先どうなるのだろうという不安、それはあらゆる世代の人々の持つものだろう。さらに私固有の問題意識としては、50歳を迎える私がこの先、社会に対してどういうことが出来るか、残してゆけばいいのかという問題、及び地方の街中にある代々の家を管理して行かなければならない私個人として、住いをどのようにするのがいいのか、これからの住いはどうなるのだろうという問題意識があった。そこで書店の店頭で手に取ったこの本に興味をひかれたのだ。2050年というのは、序章の「「2050年」から環境をデザインするか」で、JIA環境行動委員会、ものつくり大学特別客員教授の中村勉という人が書いているが、遠すぎず、また逆に現在から予測出来る範囲でもなく、こうあって欲しいとイメージを作り出し、向かって行ける未来ということで設定されたということだ。
結論として、それぞれに興味深いセミナーなのだが、素人の私が読んで、特にそこから先に何かを進めるきっかけになるというものはなかった。私が一番この本を読んで有意義に感じたのは、序章の中の「現在のトレンド VS「二〇五〇年」」という個所であった。人間らしい社会を、資源を浪費しない、地球環境を守った社会を、という主張は私が育つ中で、いろいろに見てきて、私も賛同する考え方であり、その声はどんどん強くなっているとは思うのだが、どの程度それが社会で認められている主張なのか。2009年には、日本国の首相が温室効果ガス削減を国連で積極的に主張するような状況になったが、私は、2008年の初め頃に、この序章の部分を読んで、資源を浪費しない、地球環境を守った社会を、という主張はすでに、この本の編者である日本建築家協会のような門家、有識者の間で相当程度に共通合意が取れているものであるようだと心強く感じたのだった。
各セミナーの中では、私は東京は水の都市であるという話が一番面白かった。また「4 緑で風景文化をつくる」の中で、ビルの中にグリーンを取り入れる庭作りの仕事をしている人が、別に建築を緑化しなくてもいい、それは生きている緑でなく生かされている緑だ、地面から直接生えている緑を増やさないと都市は救われない、また建築に緑を取り入れることが開発の免罪符として利用されているという思いもあると言っていたのが印象に残った。