wattsのノート−いろいろな本のノート

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2008/2/21 感想を書きました。


「「まじめ」をやめれば病気にならない 簡単!免疫生活術」安保徹 PHP研究所 PHP新書 498 2008年 1月 7日発行

「「まじめ」をやめれば」とあるが、免疫学の研究者の先生が書いた真面目な本であり、その主張されている内容は、端的にはシンプルでごく当り前のようなことである。「まじめ」をやめるのではなく、「病的な状態になってまで働くのをやめよう」ということだ。逆に、ひきこもりやニートなどの状態も健康には良くないということも書いてある。早寝早起きでお風呂にゆっくり入り、適度に運動をして、他人に寛容な、心にゆとりのある生活。特に現代的な内容といえば、パソコンを使うのは昼のうちにしようということ。パソコンの作業では交感神経が働くが、夜に活発になるのは副交感神経の働きだからである。現在、自律神経失調症を治すための本が幾種類も出ているが、そういう実用書や雑誌の健康記事に書いてありそうな内容である。それだけに表面的には納得しやすく、受け入れやすい。それが無名のライターの記事でなく、私は知らなかったが、免疫学の世界的権威という先生が、高校で習う生物程度に白血球や交感神経の仕組みも解説しながら、説くだけに説得力があるというものだ。

表面的には、そうした、まともで受け入れやすい主張だが、突き詰めてゆくと、なかなか簡単ではないものがある。考えさせられる。それは、今の日本の労働状況を、この本の中で、著者は、ことさら批判しているわけではない。最初の方で残業しないとならないのは会社の方がおかしいと言っている程度だ。そして著者は仕事をしっかりすることを否定しているのではない。だが、今の日本の社会の状況で、しっかり仕事をしながら著者が主張する健康に良い状態に自分を持ってゆこうとすれば、自分一人の対応だけでは限界があり、現代日本の企業批判、社会批判につながらざるを得ないのではないか。

また、この本の中では大病院の癌治療批判、延命治療批判などが主張されており、読めばもっともなのだが、重い問題であり、もっと多方面からの意見、考察も知りたいと思う。

「「まじめ」をやめれば」という題であるが、科学者的な真面目さによる主張が健康診断は受けない、薬はなるべくもらわない、果てはアマゾンの原住民的生き方にまで及ぶと、確かにその通りだとは思うのだが、いささか、たじたじとしてしまう。でも著者は本の最後の方で、長生きすればそれでいいというわけではない、人それぞれの生き方があり、早く死んだ人でも優れた仕事をしている人もいる、社会貢献が大事、といっても普通に仕事をしているだけで世の中に必要とされているのであり、社会貢献になっていると言うのは納得が行く意見である。長生きするためには、この本にあるように、他人ににこにこと向き合い、優しくするのがいい。でも、もちろん長生きするために他人に優しくするのではないのだ。長生き出来るにこしたことはないけど、それ以上に、常に自分の生き方に納得の出来るように生きる、それが大事なのではないかと私は考える。

一見シンプルな教え、でも考えるならば現代日本の医療、労働、人の生き方、死生観まで考えさせられる本である。

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