2008/2/7 感想を書きました。
前半で、現在(2000年代初頭)に、子供をちゃんと大学まで出すのにどれだけ費用がかかるかを AIUによる資料などから試算すると同時に、小泉内閣の格差拡大政策が進む現在、格差は広がってエリート 1%とその他 99%の社会になって行こうとしている、そういうときに子供に多額の教育費をかけることは投資ではなくギャンブルになる、つまり無駄なことであることを数字で説明するのが前半。後半では、それでは金をかけずに子供をちゃんと育てるには、どういう心構えを持てばいいかを説く。
私は 50歳近い独身者である。独身の理由は対人関係が対人不安的なものに幼い頃から悩まされ、結果としてフリーター、パラサイトシングル、ひきこもりに近い、現在の若い人の間で問題になっているスタイルに近い生き方をしてきて、とうてい結婚、子育てなど考える余裕がなかったからだ。しかし、そんな私でも今後の身の振り方を考えないとならない年齢になっている。私は一応、大学まで卒業はしていて、大学は社会科学関係の学部、その中で社会学を専攻した。なんとか課題をこなして卒業するなら、社会学の与えられたテキストをちゃんと読んでいればいい。社会学を専攻するくらいだから社会に関心はあるのだが、政治経済にはかなり疎い。漠然と今の政治のままではいけない、くらいの意識はあるのだが、それ以上現実の政治に興味を持ってあれこれする気はない。しっかり働いて貯金をどう使うかという立場になったこともないので、経済的な感覚もあまりない。この本を読んだのは、一体、子育てに今どのくらいかかるのだろうか。そんなにお金をかけないと子供が育てられないのか疑問だったからだ。
そんな私には、著者にとっては肝心の主題につなげる前置きの部分である本の前半部分が参考になった。もちろん「格差社会」という言葉などは聞いたことがあるが、それでも最近までの小泉政権がどういう政権だったのか改めて認識した。そして具体的な数字で現在の養育、教育費用の額を知ることが出来た。
逆に本のキモであるはずの後半部分については、なんだか当り前のことが書いてあると感じただけだった。つまり、父親がしっかりした自分というものを持ち、人間らしい生き方をして子供に生き方の手本を示し、子供に自ら勉強を教えればいいというようなことである。このような当り前みたいなことが大いに参考になるとしたら、現在日本の一般のサラリーマン、ちゃんと収入があり、子供があるような人には、日々の忙しい仕事の中で自分を見失っているような人が多いのだろう。
しかし、森永先生が、多額の教育投資は今やギャンブルと説き、一家のお父さんが、この本にしたがって、これから自分らしく生きる、教育に金はかけないと宣言しても、それで納得出来ないお母さんは多いのではないだろうか。そういうお母さんは、講演会みたいな席でおとなしく話を聞いて、納得したような顔をしていても、個別の会話になると、そうはいってもやっぱり実際はお金をかけないと心配で、などと言いだし、うちの子だけは金をかけて塾へ通わせて……と考えているのだ。そういうお母さん的思考をどう説得出来るかが「カネ」をかけずに子供を育てられるかどうかの分れ道だろう。