wattsのノート−いろいろな本のノート

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2007/8/7 感想を書きました。


「ウェブ汚染社会」尾木直樹 講談社 講談社+α新書 2007年 1月20日発行

現代のインターネット上にはこどもたちが接するに不適切な内容のものが多々あるので、周囲の大人、保護者や教育者は気をつけましょうという内容の本だ。やみくもにネットや電子機器と接することが危険と主張しているような、おかしな本ではない。p.55「しかし、大人と子どもの「対等性」を可能としたインターネットは、もはや人類には欠かせないものであり、私たちは、ポジティブな影響をいかに引き出し、ネガティブな影響をいかに抑えられるかに力を注ぐべきであろう。」教育学者である著者は、自身での利用や教えている大学生との接触、こどもたちへの調査などを通じて、現在のネットの生態をよく把握している。その上で、フィルタリングの設置の必要や情報モラル教育を押し進めることなど、ふだんネットを利用している私から見て納得の行く内容を主張している。p.125 暴力シーン、残虐シーンがよくないと言われるが、子どもたちは、暴力はよくないと分かって見ているので大した影響は受けない。よくないのはテレビのニュース番組などの断片的な情報で、世の中はこういうものだと思わせるカルティベーション効果である。それに対抗するにはメディアリテラシーが必要である。p.144 2003年 9月出会い系サイト規制法が成立。子どもたちは出会い系サイトを利用することで加害者にもなるのだ。p.134「とりあえず今必要なことは、ネチケット教育(情報モラル教育)に力を注ぎながらも、小・中学生に対しては無規律・無防備には使わせないことである。」という意見に私も同意する。

この本で知ったこと、教育でロールプレイとして、子どもたちにマイナスの影響を与えるようなことをしたり、させたりするのはよくないと、はっきり指摘されている。強盗役の警官が教室を襲う訓練をしたところ、恐くて学校に行けなくなった子どもが出たという。私の子ども時代を思うと、さもありなんだが、情報モラルを教える場合でも、わざと悪いメールを書かせたり、掲示板にひどい書き込みをさせたりしてはいけないとしている。

ちゃんとした本だと思えるだけに書名や本の帯「ここまできた!大人の知らないネット世界の闇!!」「いじめ、自殺、引きこもり……ブログや2ちゃん、ワンセグの毒に冒された子どもたち暴走する!」という、まるでテレビの俗悪な番組のように、いたずらに無知な大人たちの恐怖心を煽り、これからのネット社会への見解を誤らせるような本の売り出し方、こういうのは編集者が考えるのだろうけど、いかがなものかと思う。そうでなく p.92「このような広い視点と大きな構えによる人間教育の中で、次々と生まれるネット犯罪から、子どもを守ることができるのではないか。」なのだ。そして p.94「今やわが子を守る親の基本として、IT関連の理解と技術習得は欠かせない状況になっている。」

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